全国老健大会発表内容 第18回愛知県大会
個別プラン実施後のバランス機能の変化/ケアワーカーによるプラン実施の効果
1はじめに
2006年4月から実施された介護報酬の改定は、1.中重度者への支援 2.介護予防・リハビリテーションの推進 3.地域包括ケア・認知症ケアの確立 4.サービスの質の向上 5.医療と介護の機能分担・連携の明確化という事にあります。この改正後、当老人保健施設ではADLの向上や心身機能向上、転倒予防を目指し、大グループによるレクリエーションから個別のリハビリテーションマネージメントによる個別プランへの転換を積極的に行ない、その結果、個別プラン開始後6ヶ月間のバランス機能に大きな変化が見られました。
2対象者として
通所デイケアに通う60歳から95歳までのご利用者で、短期集中リハビリテーションを受けておらず自力歩行が可能な方を対象としました。また期間は介護保険が改定された直後の2006年5月〜12月までの7ヶ月で、最初の2ヶ月と最後の2ヶ月を測定する事ができた51名のご利用者を対象としています。
3方法として
介入方法は主に 1.ADL訓練 2.基本動作訓練 3.筋力強化 4.上肢機能訓練 5.歩行訓練 6.全身運動 7.認知機能訓練などを中心に行ないました。
これらのプランは、施設の作業療法士とデイケアの介護スタッフが共同して作成し、ケアワーカーによって実施しました。効果の判定は作業療法士が対象者全員に月に一度Berg Balance Scale(以下, BBS)を実施し、最初の2ヶ月の平均と6ヵ月後の2ヶ月の平均の差を用いて判定しました。
『Berg Balance Scale( BBS)』とは
14項目(下に記す)からなる、0〜4点の5段階評価によるバランステストで満点は56点です。
療養型の報告では、おおよそ0点〜34点が車椅子レベル、34点〜42点が歩行補助具使用レベル、42点以上を補助具なしレベルと報告しています。また40点以下において転倒の可能性が急激に高くなると報告されています。
1.立ち上がり 2.立位保持(2分間) 3.座位保持 4.腰掛け 5.トランスファー 6.立位保持(閉眼) 7.立位保持(両足そろえ) 8.リーチ動作 9.床のものを拾う 10.左右の振り返り 11.方向転換 12.踏み台昇降 13.タンデム立位 14.片足立ち
4結果として
BBSの結果1
BBSの結果2
プラン実施の結果、BBSの得点が1点でも向上が見られた対象のご利用者を向上群、変化無しまたは低下している対象のご利用者を非向上群として比較した結果、向上群が40名(78%)、非向上群が11名(22%)となり。約80%にバランス機能の向上が見られました。
以下に年齢、生活様式、プラン内容による比較の結果について見ていきたいと思います。
(図1)
年齢別比較
年齢別比較において特徴的であったことは、90歳台のご利用者が17名いるにもかかわらず、非向上群が0人でありました。(図2)
生活様式による比較
生活様式による比較は、基本動作を多く含むベッドでの生活と畳の上に布団を引いた生活について比較しています。件数としては少ない為一概に比較は出来ないが布団利用者の非向上群の割合が多く見られました。(図3)
プラン内容による比較
プラン内容においては筋力強化(下肢の筋力強化)歩行訓練などが多く含まれています。特徴的な結果として、上肢機能訓練を行なったグループにおいてもバランスの向上が見られています。ご利用者によっては複数のプランを行なっている方もおられるため、症例数の合計が対象者数の51人を超えます。(図4)
診断名による比較
診断名による比較において、その他の項目には認知症やパーキンソン病などの変性疾患や虚弱老人などが含まれています。内部疾患は心疾患、癌、糖尿病などが含まれています。脳卒中の利用者において、若干非向上群の割合が多く見られました。非向上群の背景には、既に高得点であるため得点の変化が出にくい例も含まれています。(図5)
以上の結果において、非向上群に含まれるご利用者の中には、評価期間中に骨折や発熱または基礎疾患の症状の悪化などの原因による低下がみられ。向上群に含まれるご利用者の中でも3点以上向上したご利用者のほとんどは運動の未経験者や、体調不良後の回復後であったことが認めれています。
5考察として
年齢比較において、90歳代のご利用者の非向上群が1名も見られないことや80歳台のご利用者においても16名(約70%)の向上が見られたことから、年齢を問わず個別プランを実施して行くことで機能回復が可能である事を示唆しています。
生活様式においては、難易度の高い基本動作を含む布団使用者において、非向上群の割合が高い状態を示しています。症例数が少ない事もありますが立位バランスと基本動作の関連がないとも考えられ、今後追跡調査を行ないたいと思います。
プラン内容による比較では、上肢機能訓練を行った症例についても向上が見られていることや、全身持久力や歩行訓練、そして下肢筋力強化を行なったものが全体の約80%に見られたことからも運動する事自体がバランス機能の改善に役立つと考えられます。また、向上群の多くは、日常の日課として家庭内での役割や趣味活動を持つご利用者も見られたため、今後は運動療法だけでなくライフスタイルを確立していくマネージメントを行うことで年齢を問わずバランス機能の維持・改善が可能である事を示唆していると考えます。